MCA、5Gの将来像を技術面・サービス面、キャリア・ベンダ・国内・国際動向等多角的に調査した結果を発表

移動体通信・IT分野専門の調査会社である株式会社 MCA(https://www.mca.co.jp/)は、5G市場の動きを国際動向や主要プレイヤー、テレコム業界と他の主要業界との関係などの様々な観点から調査し、その結果を4月15日に発表しました。調査結果の要点は以下の通りです。

  • 各キャリアが採用する5Gベンダは基本4Gを踏襲も、中国系は採用見送り
  • 5G基地局投資、2023年度には1000億円の大台を突破へ
  • 5G本格化でますます重要度が増すチップベンダ

本調査結果については、調査レポート「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版」(本体価格200,000円)として発刊しています。

■調査結果抄録

□各キャリアが採用する5Gベンダは基本4Gを踏襲も、中国系は採用見送り

NTTドコモの5G基地局ベンダは4Gから変更はなく、NECと富士通だが、NECはサムスンと富士通はエリクソンと協力し、機器提供を行う事になった。国内ベンダ協力の下、ドコモスペック開発というスタンスに大きな変化は無いが、次第に海外ベンダに対する抵抗感も希薄化している。

他のキャリアも基本的には4Gから変更はないが、中国勢がチャイナリスクにより勢いを失い、やはり欧州ベンダ勢が強く影響を持っている。

KDDIは、従来行っていたKDDIスペックの開発を4G時代に中止し、ベンダ仕様を受け入れる方針へ転換している。現在は、KDDIに装置を提供する全てのベンダが海外ベンダであり、標準化技術をいち早く取り入れたい意向と見られる。

ソフトバンクは、Vodafone時代から海外ベンダを採用していた経緯からベンダ仕様に抵抗感がなく、先端技術を低価格でいち早く手に入れる方針がうかがえる。4Gでは中国ベンダを採用していたが、米中貿易戦争を発端としたチャイナリスクを背景に欧州ベンダに回帰している。

新たにMNO事業へ参入した楽天は、ソフト・仮想化をベースとした新技術をいち早く投入し、既存MNOとの差別化を狙っている。世界初のオール仮想化のモバイルネットワークを構築するため、Altiostarを中心とした新技術を持つベンダとの連携を強める。正式商用化で契約数の増加が見込まれる中で、品質が保たれるかが焦点だろう。

□5G基地局投資、2023年度には1000億円の大台を突破へ
楽天モバイルを除く通信3社の5G基地局投資金額予測を合算して5G基地局投資の状況をみると、年を追うごとに投資額は増加し、2023年度には1000億円の大台を突破するまで拡大すると見込まれる。

割り当てられた周波数帯や展開計画など各社の状況はまちまちである。今回の予測における背景を各社ごとに整理したい。

まずNTTドコモは、4.5GHz帯の周波数を唯一獲得したキャリアである。4.5GHz帯は衛星周波数との干渉も問題なく、非常に展開しやすい。またローカル5Gの周波数とも隣接している。NEC、富士通はローカル5G周波数にも対応した基地局をNTTドコモに提供している。

KDDIは、3.7GHz帯と28GHz帯だが、3.7GHz帯は衛星周波数との干渉があり、都市部での展開が難しい。そのため干渉を避けるために出力の低いスモールセル基地局を多数展開することにより、エリアをカバーする予定である。このような背景から、投資額も他キャリアと比較し高いと想定される。

ソフトバンクも、KDDI同様3.7GHz帯と28GHz帯だが、他キャリアと比較し投資額は低めになると予測した。これは、ソフトバンクの5GサービスはIoTをキーテクノロジーとして考えており、自動運転などの低遅延の特性を最優先に実現したいため、大容量に関わる初期の5G基地局展開を抑えていると想定されるためである。また、既存LTE周波数の5G化を積極的に捉えている点も考慮した。

なお、投資額の予測にあたっては、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯を対象としている。各キャリアとも総務省に提出した開設計画よりも基地局展開を前倒しすると明言しており、その状況を踏まえて算出を行った。

□5G本格化でますます重要度が増すチップベンダ
通信規格の世代交代にともない、業界を構成するプレーヤーの力関係が変化してきている。

3Gの後期に登場したスマートフォンは、爆発的な普及を遂げ、Apple、Samsungなど数社で世界シェアの半分以上を握る構図が出現した。通信事業者は、加入者シェアを獲得するために、人気端末の販売が重要ポイントとなり、端末ベンダの力が強くなる。

またこの頃から、ネットワークで使用される周波数の帯域が激増し、人気端末がどの周波数に対応するのかが注目される。チップベンダは端末ベンダの意向に沿って開発を行い、通信事業者は人気端末がサポートする周波数帯域のエリア拡充をおこなった。

4Gで国際標準が一本にまとまったことにより、端末、インフラ、チップ分野では、巨大なベンダがさらに巨大になる構図が定着した。特に標準化をサポートしたチップを開発し大量供給することができるチップベンダが限られたことで、特定の巨大チップベンダのチップ開発が完了しなければネットワークで新技術を利用できないという状態が発生する。技術を先行して導入したい日米韓中の通信事業者や、そこへ製品を提供するモバイルベンダは、チップベンダの開発完了時期から開発線表を弾くことになる。

5Gに向けて、自社でチップ開発を行うことができるSamsungやHuaweiは、自社グループ内で標準化に対応したチップ開発を行い、自社製品に採用している。Qualcommなどの特定チップベンダの開発スケジュールにより、端末やインフラ製品のスケジュールが左右されないように対策している。

今後、5Gが本格化する中で、IoTや自動運転などモジュール化などが進み、大量のデバイスがネットワークに接続するような利用方法が定着すると、チップベンダの重要度がさらに増すことになると考えられる。


■調査レポート「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版」~5Gの将来像を技術面・サービス面、キャリア・ベンダ・国内・国際動向等多角的に分析~
発行日:2020年3月
判型:PDFファイル(A4版260頁)
発行・販売:株式会社 MCA
頒価:200,000円(税別)
販売方法:PDFファイルのダウンロード及びA4コピー刷り製本
※調査レポートの目次など詳細は「レポート目次」をご参照ください。


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