移動体通信・IT 分野専門の調査会社である株式会社 MCA(https://www.mca.co.jp/)は、NFVの視点を踏まえた主要通信キャリアのネットワーク設備投資の分析を通して、各ネットワーク機器の市場規模やベンダシェアを調査し、その結果をとりまとめました。調査結果の要点は以下の通りです。

・2013年度の通信キャリアの設備投資額は2兆7,500億円に達する
(NTT、KDDI、ソフトバンクの主要3グループおよびその他キャリア合計)
・主要3グループの今後の設備投資額は減少傾向と予測される
・2013年度のインフラ機器市場は7,225億円と見込まれ、2014年度には7,000億円を下回ると予想される

本調査結果については、調査レポート「主要キャリアのネットワーク投資戦略と通信インフラ市場2014年度版~NFVで大きく変貌するキャリアの設備投資動向と通信インフラ機器市場を予測」(本体価格200,000円)として発刊しています。

■調査結果抄録

□主要通信キャリアのネットワーク設備投資状況
日本の通信業界は、電力系事業者を除けば、事実上NTT、KDDI、ソフトバンクという3つのグループに集約されている。

各グループの設備投資は、低落傾向にあるNTTグループ、5,000億円を中心に前後しているKDDIグループ、増加傾向にあるソフトバンクグループという色分けになる。ソフトバンクグループは、基地局建設といったモバイルへの積極投資とWCPやイー・アクセスの買収などのM&Aによるものだ。

2013年度の設備投資額は、3グループおよびそのほかの通信キャリアの投資額を合算すると2兆7,500億円に達した。しかし、今後の設備投資は、ソフトバンクグループを含め総じて各グループとも減少傾向になると予想される。それは、これまで各グループの設備投資を支えてきたモバイル、特に基地局投資が一段落する、また、グループ内で進行しているネットワーク統合化の効果も現れるからだ。さらに、NFVと言ったネットワークの仮想化の影響も大きいだろう。

各グループの設備投資推移

□インフラ機器市場の現状と予測
2014年度以降のインフラ機器市場は、総じて減少傾向になると予想される。2013年度のインフラ機器市場は7,225億円と見込まれ、2014年度には7,000億円を下回ると予想される。

レガシー系だけではなく、これまで4,000億円前後と高水準を維持してきたアクセス系機器市場は、2013年度から減少し始めている。さらに、上昇傾向にあったIP関連機器市場も2013年度をピークに減少に転ずると見られている。

2014年度以降のアクセス系機器市場、なかでもその大部分を占める携帯電話基地局(無線機)市場がLTEからLTE-Advancedへの移行の端境期にある。LTE-Advancedの設備投資は2016年度から本格化するが、新設局はスモールセルが主体であり、金額ベースでは2012年度レベルまで回復するのは難しいと予想される。

また、IP関連機器市場の減少傾向は、NFVの影響と見られる。2014年にはネットワークの一部だけをNFV化するような通信キャリアが現れ、2015年には同一の仮想インフラの上に、複数のソリューションが実装されるようになり、2016年にかけて多様なソリューションを統合管理できる環境が整備されていくと予想される。

NFVの目的の一つは、アプライアンスから汎用サーバへの移行によるコスト削減である。そのためハードウェア部分は確実に価格破壊が進む。しかも、仮想環境では、アプリケーションがどのサーバでも展開できるので設備の利用効率も非常に高くなる。ベンダ試算によると既存のネットワークに比べ30~40%のコスト削減が可能だという。

そうなれば、既存の通信機器ベンダは、コモディティ化が進むハードウェア分野での勝負するのではなく、付加価値を生む運用管理機能やオーケストレーション機能の開発、そして全体のインタグレーション分野へと自らのビジネスをシフトしていくと考えられる。

NFV/SDNといった新しいアーキテクチャーがインフラ機器市場に与える影響は、単にハードウェアだけを見れば明らかに市場規模を縮小させる方向に働く、だがNFV/SDN向けのソフトウェア、さらにこれと連携するOSS/BSSといった市場も視野に入れれば、ベンダにとっては新たな市場も見えてくるだろう。

通信インフラ機器市場の推移と予測
(出典:MCA)

■調査概要

現在、キャリアの設備投資に大きな影響を与えると注目されている動きは、NFV(Network Functions Virtualization)です。

その背景のひとつには、スマートフォンの普及による急増するトラフィック、それとは逆に低下するARPUなどキャリアの経営環境が厳しさを増していることが挙げられます。

NFVは、これまでアプライアンスであったネットワーク機器を仮想化基盤上でネットワーク機能を実現する汎用サーバに置き換える取り組みです。それによってコスト削減、柔軟なネットワーク構成、迅速なサービス提供などが可能になると期待されています。

しかし、NFVによるネットワーク機器のコモディティ化は、通信機器ベンダにとって「諸刃の剣」となるかもしれません。それは、これまでの通信機器ベンダが提供してきた高価な専用ネットワーク機器が安価な汎用機器に置き換わり、市場自体が縮小する上に、新たな競合が参入して来る可能性もあるからです。

NFVによってキャリアのネットワークは大きな変貌を遂げるでしょう。そして、通信インフラ市場も市場構造はもちろん、そこで活躍しているプレーヤもこれまでと全く違っているかもしれません。

調査レポート「主要キャリアのネットワーク投資戦略と通信インフラ市場2014年度版~NFVで大きく変貌するキャリアの設備投資動向と通信インフラ機器市場を予測」では、NFVの視点を踏まえて、キャリアのネットワーク設備投資、および各ネットワーク機器の市場を予測しました。

調査概要の詳細などは、PDF版のプレスリリースもあわせてご覧下さい。


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